大阪市北区天神橋( 南森町・扇町・天満 )の心療内科・精神科・メンタルクリニック「かわぐちクリニック」
強迫性障害は、自分でもおかしいと分かっていながら逆らえない考えのために、何度も同じことを繰り返してしまう病気です。
自分の意に反して頭に浮かび逆らえない考えを強迫観念といいます。例えば、「きちんと手を洗ったか、まだ汚れているんじゃないか」、「戸締りをしたか、カギをかけ忘れたのではないか」などです。この強迫観念によって生じる不安を打ち消すために行なう行為を強迫行為といいます。例えば、「不潔に思えて何度も手を洗う」、「戸締りやドアノブを何回も確認する」などです。
強迫性障害では、強迫観念からくる不安や苦悩を打ち消すために強迫行為を繰り返します。自分でその行為を無意味だとわかっていても止められず、日常生活に大きな支障を来すことがあります。また、うつ病など他の病気でも強迫症状がみられることがあります。
様々なタイプの強迫症状があり、代表的な症状として以下のようなものがあります。
細菌、ほこり、血液などの汚れに対する恐怖から、手洗い、入浴、洗濯、掃除を繰り返します。手すりやドアノブを不潔だと思い込んでさわれないこともあります。また、手洗い行為の繰り返しにより手荒れがひどくなる、入浴に何時間もかかる、一日中床を磨くなどのために、生活に大きな支障が生じることもあります。
戸締り、ガスの元栓、電化製品のスイッチを、「きちんと閉めて(切って)な いのではないか」という考えが頭から離れず、何度も確認してしまいます。確認を繰り返すため、外出に時間がかかったり、場合によっては外出先から確認のために自宅に戻ってしまうこともあります。
「誰かに危害を加えたかもしれない」という考えが頭の中を支配し様々な形で確認しようとします。例えば、車を運転中に「人をひいたかもしれない」と不安になり、車を止めて確認しに行くことがあります。
物の配置などが「ある特定のパターン(左右対称など)で並んでいなければならない」と思い込み、その点検や整理に時間を費やします。一日の大半をそのような作業に費やすと生活が疲弊してしまいます。
「ある手順で物事を進めていかないと恐ろしいことになるのではないか」という考えに頭を支配されて、いつも同じ手順で家事や仕事をします。作業手順を確認しながらになるため時間がかかり、他の作業に手が回らなくなります。
多くの人にとってつまらないものと思われるものを集めては「いつか必要になるかもしれない」と思い込み、どうしても処分できません。物を集めたいという欲求が日常生活を支配し、収集物が生活の場を侵してくると大きな問題になります。ただ他の強迫と違って、自分の強迫行為を不快に思うことはなく、周囲の人が困って治療に来られるケースがほとんどです。
これまで強迫性障害は心理的な要因で起こると考えられてきました。しかし最近は、その背景に脳内のセロトニンという神経伝達物質の機能異常があることがわかってきました。ドーパミンなど他の神経伝達物質の関与も考えられています。
薬物療法と行動療法(暴露反応妨害法)を組み合わせて行ないます。病状は少しずつ回復していきます。焦らずに治療に取り組んでいく姿勢が大切です。
これまでは三環系の抗うつ薬が使われてきました。最近はセロトニンのバランスを整える働きのあるSSRIというタイプの抗うつ薬が用いられます。薬の効果が出るまで2~4週間かかるため、服薬を継続することが大切です。不安感や焦燥感が強い場合は、不安を抑える働きのある抗不安薬などが併用されることもあります。
強迫性障害では、強迫観念による不安のために、確認や手洗いなどの強迫行為をしてしまいます。しかし、強迫行為により不安が軽減することはなく、逆にさらに不安が強まり、さらなる強迫行為を誘発し悪循環に陥ります。
行動療法では、この悪循環を断つために専門医の指導の下、強迫観念を誘発する刺激を不安の軽いものから順に体験し、恐れていたようなことは起こらないことを体験を通して学習していきます。うまくいく場合もありますし、思ったようにいかないこともあります。専門医と相談しながら継続して取り組んでいくことが必要です。
脳の病気であることやご本人の苦しみや治そうとする努力を理解することが必要です。症状の波に一喜一憂せず、気長に支援するというスタンスが大切です。約1/3の方にうつ病の症状が現れることがあります。気になる症状があれば、専門医にご相談ください。また、ご本人から確認などの強迫行為に協力を求められることがありますが、回復や治療を妨げることになるため協力は控えてください。